2010/11/27

衛藤ヒロユキ「週刊わたしのキモいペット」 - めしませ、じゅくじゅくジューシーなアロマ!

衛藤ヒロユキ「週刊わたしのキモいペット」
衛藤ヒロユキ「週刊
わたしのキモいペット」
 
参考リンク:Wikipedia「週刊わたしのキモいペット」
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この作品「週刊わたしのキモいペット」は、2008年に携帯コミックとして配信された後、ブレイドコミックス全1巻として刊行されたもの。作者・衛藤ヒロユキ先生としては、確か初めてのショート形式の作品(毎回5ページ・全24話)。

――― 「週刊わたしのキモいペット」, 版元の宣伝文 ―――
あの大人気ギャグ作家・衛藤ヒロユキが携帯オリジナルで送る、キモかわいいペット満載コミックが早くも単行本で登場!!!

どんなお話かというと。何だかびみょうにファンタジー的な町≪カイデルタウン≫では、いま空前のペットブーム。12歳のヒロイン≪インコちゃん≫はそれに乗せられて、『ものすごいペットがほしい!』などと、浮かれたことを神さまにお願いしてしまう(p.7)。
すると『淫行ちゃん!!』と、おかしい名前で彼女を呼ぶ声が、窓の外から。やがて登場したのは≪ペットの神 ニャンプラー≫と名のる、やたらに手足の長い、ネコっぽい生き物。

【ニャンプラー】 わたしの使命は 良い子にステキなペットを めぐんでやる事!
(中略)気に入るまで どしどしペットを 紹介しますニャ

と、いちおうありがたそうなことを言いながら、なぜかニャンプラーの手足と胴体が、どんどん長~く伸びていく。やがてインコちゃんのお部屋は、それでいっぱいになってしまう!
このいきなりのキモさを見せつけられながら、うっかりその提案に乗ってしまったのが、われらのヒロインの運のつき。追って次々と紹介されるペットらが、少なくともニャンプラーくらいに必ずキモいのは、いたってとうぜんの展開と考えられよう。

ところでこんな分析は要らなそうなのだが、でもひとこと。ペットはほしいが“お金がない”と、まずインコちゃんが嘆いている。そこへニャンプラーが、『淫行ちゃん』という名でヒロインを呼ぶ。それから彼の手足と胴体が、限りなくニュニュ~と伸びていく。
…というものを見ると。そんな風に考える『必要』はないとしても、しかしこの流れに、いやらしい含みがないとは思えない。

かつ、そうかといってもその後の展開が、とくべついやらしいわけではない。けれども可能性というかふんいきとしてのいやらしさが、明らかにチラ見えしている。
そのことを読者はちゃんと見て認識しておりつつ、しかし笑いという肉体の反応に流してスルーする。これが、≪ギャグ≫というものの作用の仕方だ。

とまでが明らかになったところで、筆者の心にふれたお話をひとつご紹介。その第16話、近ごろアロマテラピーにこっているインコちゃんが、気まぐれに『「いい香りのペット」って どうかしら?』と、奇妙なことを提案(p.80)。
そこでニャンプラーはご要望に沿ったつもりで、≪花おやじ≫というペットをそこに召喚。すると造形が花っぽいオッサンが現れ、そのわきの下あたりから『もわ~』と、何かのニオイが立ちのぼってくる…!
するとインコちゃんは、『ぎゃ~っ! いい匂い!!』と、ざらには聞かれないようなせりふを叫びとして発し、逃げ出そうとする。しかし花おやじは、オヤジ特有の粘着的態度でドドド…とインコちゃんを追いかけまわす!

【花おやじ】 ジャスミンの 香りですよ!
【インコ】 いい匂いだけど 助けて~!!

続いて花おやじは二重の意味での『変態』を繰り返し、びみょうに人相を変えながら、『深みのある フローラルの香り』や、『もぎたて レモンの香り』などを放つ。それらがいちいち、いい香りには違いないのだが。しかしインコちゃんには、どうにもその発生源のオヤジがキモくてかなわないのだった。

…ここで考えれば。いまの世の中、『加齢臭』とかいうものがどうだとかうるさいけれど。まあそういうものが、じっさいにないとも言えないが。
けれども真に問題となっているのは何ごとであるのか、この作例によって、よ~く分かったはずだ。匂いがよかろうが悪かろうが、ようするにオヤジというものは好かれない! その一方で、(つまらんことを申し上げるが、)汚物であっても女子高生か何かから出たものならば、マニアの市場では値段がつかないこともないらしい。
だからどうしたというのだろうか? みょうに筆者は(オヤジだからか、)ここらで不きげんになってくるのだった。

あとこの作品について、前に「舞勇伝キタキタ」について述べたような、『児童まんがのていさいをよそおってはいるけど、実は内容が子どもうけするようなものでない』、ということも指摘はできる。…が、だからどうしたというのだろうか? 誰がどう悪いということもないけれど、ただいま筆者はみょうに不きげんなのだった。

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