2010/05/01

三上骨丸「罪花罰」 - 巴里の憂愁、帝都の腐臭(?)

三上骨丸「罪花罰」第1巻 
参考リンク:Wikipedia「罪花罰」

いちおう『新興』の媒体と言えそうなジャンプスクエアは、その前身の月刊少年ジャンプから移行の「ギャグマンガ日和」が看板連載ということもあってか、びみょうにギャグへと力が入っていそうなふんいき(だった)。その2007年12月の創刊と同時に、ポンセ前田「世界の中心で太陽にほえる」、服部昇大「魔法の料理 かおすキッチン」、そして今作と、フレッシュな作家らのそれぞれ新味あるギャグ作品を送り出しており。
で、その3本の中で、1つだけ現在も連載中なのが、今作こと三上骨丸「罪花罰」。題名の読み方は、『つみかばつ』。どんな作品かって宣伝文句によれば、『お耽美変態フラワーギャグ』(第2巻・帯)。
さいしょに1つ感動したところを述べておくと、この作品のジャンプ・コミックス版が第3巻まで出てるのだが、そのカバーの色味がひじょうに美しい。そのへんに置いといても、気分がいい。飾りものにもなるようなギャグまんがの単行本なんて(再刊ものは除外し)、これ以外には知らない。

ところで。筆者は人と知りあうと、その運の悪い人に対して、『あなた何か、心に残っているギャグまんがってありませんか?』、などとたずねてみる場合がある。その問いに対して1人の女性は、『う~ん、「パタリロ」とか?』と、答えてくれた。
そっか、そんな作品があったなあ…。筆者から見ると≪ギャグまんが≫というものでなく、『国際アクションコメディ』って感じだけど。ただし『耽美』っぽい要素と笑いとを結びつけた創作として、それは初期の重要な貢献ではあろう。

『耽美-と-笑い』というと思い出すことがあって、1983年の山上たつひこ「JUDOしてっ!」のヒーローが、すごいナルシストの美少年で、そして世界を耽美チックに見ているのだった。その彼が、なぜかむっさい柔道部で活動しなければならない、というギャグだった。
そうすると。ギャグまんがのヒーローに美少年をもってきて画期的だった鴨川つばめ「マカロニほうれん荘」、ギャグと耽美を組み合わせた「パタリロ」、それぞれがもろに山上「がきデカ」の影響下の作品だと考えられているが、追っての「JUDOしてっ!」では、それぞれの発展させた要素が、再び「がきデカ」の作者による創作へと回収されているもよう。しかし惜しくも「JUDOしてっ!」は、あまり成功作とも言えないものに終わったけれど。

と、そんな時代から細々と描きつがれてきた『耽美系ギャグまんが』の中で、2004年からのマガジン系の作品、やきうどん「主将!! 地院家若美」には、また画期的なところが大いにある。なぜか再び柔道部のお話になっているが、そうとしても「地院家」の描くような、マッチョと巨乳が格闘技でぶつかりあう『耽美』などという発想が、いにしえにはなかった。その萌芽的なものとして、中途はんぱな作品だが田丸浩史「超兄貴」(1993)の存在もありながら。
そのような「地院家」の発想がどこから出てきたものかというと、Mid 1990'sにはやったSNKやカプコンの格闘ゲームの『やおい』パロディとか、そんなところかもとは思いつつ。…が、よくは知らない世界なので言い張らない。ともかく「地院家」は超重要なので、詳しくはそれを主題にしたときに。

で、このたびの主題の「罪花罰」は、もっと1970's的なニュアンスの『耽美』を描く、よい意味でのレトロなテイストがある作品。いっそ、竹宮惠子先生が表紙を描いていたころの『JUNE』っぽい、というか。またレトロというなら、さきに見たスクエア創刊時の新鋭のギャグ3作、なぜだかぜんぶがレトロっぽいテイストの作品でありつつ。
また、これはいちおう少年まんがと見ておくけど、スタイル的には少女まんがの方に近いかも。ただし少女誌に載せてうけるようなものとも考えがたいので、これこそいわゆる『ニッチ』の創作というものだろうか。

ではその『罪花罰』の概要を見ておくと、どこかの町のいかしたお花屋さんの屋号が『罪花罰』。その店長の美青年≪薔薇紋(ばらもん)≫は、華道の家元の跡継ぎという立場を棄てて、独自の崇高なる美学を追求しまくっている耽美ガイ。何せ彼自体があまりにも≪美≫なので、ほっとくとすぐに服を脱いで、その美しさを誇示してやまないのだった。『耽美』とはとうぜんそういうものだが、彼の実現しようとしている美は、俗世間から見て、あまりにも過剰であり尖鋭すぎるものなのだった。
そしてバイトの美少年≪桔梗クン≫は、その店長から注がれるむやみな愛の大いさに、そして薔薇紋の先鋭的美学の押しつけに、いつもまいっちんぐなのだった。薔薇紋から桔梗クンへの随時のセクハラとストーカー行為こそ、今作が『基本』として描いているものなのだった。

ところで今作をず~っと見ていると、桔梗クンの脳天のいわゆる≪アホ毛≫(へんにはねている毛髪の束)の描き方が変わってきている。さいしょは地味にとがっていたものが、その第3巻を見れば『もっこり』と、たいへんにパワフルなしろものに…っ!
そこにとうぜん何らかの≪意味≫を、うっかりと見出してしまいそうなわれわれではある。そしてたいへん申し訳ないが、この話の続きは明日かあさってに…!

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