2010/09/26

佐藤秀峰「海猿」 - BLACK イズ ビューティフル!

佐藤秀峰「海猿」 
関連記事:『佐藤秀峰「海猿」 - パンチラと ウンコとゲロ と 人命救助(字余り)』

関連記事を書いた後、夜ふかししてパソコンにかじりついて、『漫画 on Web』で公開中の「海猿」を(*)、がんばってさいごまで読んだ。

超かんたんにご報告いたすと、ずいぶんまじめなお話だった。いや、それはまあ、主人公らの海上保安官がまじめでなかったら、みんなが困っちゃうとはいうものの。
また、まれに作家サイドの文脈に即して申せば。こちらの佐藤秀峰先生は、これに続いた作品が、医療もの「ブラックジャックによろしく」、そして戦記もの「特攻の島」…と、その主要作の“すべて”が、目に見えるものとしての『生か死か』の極限状況を扱っておられる。別にいいか悪いかではないが、そういう作家性はあるっぽい。

あと、自分の頭がはっきりしてなかったせいか、前記事には、やや飛躍になっていた部分があった感じかと。そこを手短に、補足させていただけば。
あえて独断的にまとめると、佐藤秀峰先生のまんが観(の一部)として、『編集者ごときは不要』、『出版の仕事とは事務作業』、だとする。そして先生の主宰される『漫画 on Web』は、そのような理念が具体化されたもの、とも見うる。で、そのポリシーから成功作が生まれてくるかどうか、ということをわれわれは気にしているのだ。

が、それはそれとして、われわれの文脈に戻ると。前記事で見た、今作「海猿」第1話のおかしな過剰さ、『パンチラ・ウンコ・ゲロ』が大フィーチャーされている件…。
そのポイントが、続いたお話で、ちゃんと継承され展開されている、と言う気はしない。ヤングサンデー掲載作特有のものと見られる、露悪的とか悪趣味とかいう要素は、第2話以降の「海猿」には、あまり出ていない。
いや別に、ことさらそういうものが見たい、というわけではなかったが。そして、出てきていっきなり下着や排泄や嘔吐を見せあったヒロインとヒーローはどうなるのか…と心配してたけど(?)、この2人のラブ展開もまた、イントロに比すればけっこうきれいなお話になっているが。

ただし、『ヒロインのおパンツの色は黒』という要素、これだけは別。なぜかこれだけは継承され、続いた全編の中の決まりごと(?)にまで昇格しているのだった。

ちょっとネタバレっぽいところを説明いたすと、長い航海から帰ったヒーローが、ぐうぜん街角でヒロインを見つける。すると彼女は、新聞社の料理記事担当になったせいで、ブクブクに太ってしまっている。
そのことを恥じてヒロインは、『人ちがいです!』と言い張って走り去る…つもりだったが、逃げきらぬ前に路上ですっ転んでしまう。するとヒーローは何かを目にして、『その黒パンツは!』と言い、相手をヒロインと認定する。

さらにネタバレ度の高いところを見ると、やがて恋人同士になった2人。ところがいろいろあって、彼女は別れる決心をして、黙ってアパートを引き払ってしまう。からっぽの部屋をあさってヒーローは、彼女の黒パンツだけを見つける(彼がかくしていたもの)。
で、ヒーローは浜辺に出て、その黒パンツを頭にかぶってひとしきりおセンチにふけった後、『くそっ!』か何か叫んで、その黒パンツを海の沖に向かって投げ込むのだった。

…なぜに、そうまで、このヒロインのパンツが黒でなければならないのか? 否、これでは逆にむしろ、『パンツの色が黒なのでヒロインである』、と言わぬばかりではなかろうか?

で、そんなんなので、ぼんやりした筆者はヒロインの顔も名前も憶えないままに全編をさっさか読み終えてしまって、彼女のイメージが『ミス・黒パンツ』としか記憶に残っていない。そしてそのことを、自分だけのせいとは思っていない。

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