2010/09/29

川島よしお「ナックルボンバー学園」 - 去勢をされまいとして虚勢を?

川島よしお「ナックルボンバー学園」第1巻 
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われらの川島よしお先生、またの名を『ナベちゃん』先生。その私生活でのニックネームが、ナベちゃんであるらしい。
そしてこの「ナックルボンバー学園」は、ナベちゃん先生の少年チャンピオンでの『最新』の連載作(2001-02)、少年チャンピオン・コミックス全1巻。ただし第1巻というていさいなので、例によって未収部分がかなりありそうなのだけど。
そして、なぜにいまこの作品か…という理由が特にない。例によって、たまたま目についたので見ちゃったから、でしかない。

で、たまには素朴な感想も言わせていただくと。ナベちゃん先生の週チャン掲載作が、「グルームパーティー」、「O-HA-YO」、そしてこの「ナックルボンバー学園」と続いたが、自分には「グルーム」がいちばん面白い。何か、読者に挑んでる感じがいい。特に第1~2巻の、≪さそりちゃん≫の大暴れがいい。
さらに、ナベちゃん先生のご創作ぜんぶから言うと、いちばん自分が好きなのは「さくらんぼ論理」(1999, ヤングチャンピオンコミックス全1巻)。いやもうこれは、まじぇで探しましたYO!…探しに探したあげく、赤羽のブックオフで見つかったような気がする。青年誌掲載だったので、たぶん作品系列でいちばん下ネタ度が高い。これはいつか、この場で必ずレビューするつもり。…だがいまは、その貴重なるご本が自室内で見つからなくて。

そして「ナックルボンバー学園」の話に戻ると、わざわざ『学園』と題名に出ているように、少年誌っぽく学園もので…という意図があったのかなあ、というふんいき。その前のシリーズらがけっこうフリーダムだったので、そこらを引き締めてかかった感じあり。
かつまた、同じく題名にある『ナックルボンバー』ということばだが、これはただ単なる力強さを意味しているのではない。作中に、何度か出ているギャグのことをさしている。

どういうものかというと、これは女の子専用のギャグで。たとえばブルマーを着用しているものとして、その上の方から手をつっこみ、脚の出るところからそれぞれの手を出し、そして股間の前のところで、両手をがっちりと組み、『ナックルボンバー!!』と叫ぶ。
…実作で見てもあんまり笑えるものでないのだが、こうして字だけで書いたら、さらに寒い感じだろうか? この『ナックルボンバー!!』というギャグがもっとウケていたなら、少なくとも、今作の連載がもうちょっと続いていたはずでありつつ。

で、別に分析理論がどうこう以前に、これがペニスを、それも勃起したものをさしている所作であることは、どうにも明らかすぎ。そして≪ギャグ≫として成り立ってはいるのだが、しかしこの手のネタをやたら好む筆者に対しても、もうちょっと来ないのだった。

いちおうかわいいかのように描かれた女の子に、そんなこっけいなしぐさをさせるというところが、ちょっとダメだった気がする。言うとたとえば、『魔女っ子のそうび品の魔法のステッキ』…あれがまた≪ファルスのシニフィアン≫(勃起したペニスを象徴するもの)なんだけど。つまり同じなんだけど、それがいちおうかわいいアイテムなわけで。
たとえばの話を重ね、かわいい女の子がハンマーでバカな男を撲殺しまくるとか、そんなお話がいまはどこかにありそうだが、そっちの方がまだしも機能しそうだ。今作中の『ナックルボンバー!!』には、あまり好かれないようなタイプのこっけいさに加え、ポーズで終わって動きがない、という難点もあるようであり。

しまらない話のさいごに、なぜか筆者の心に残ったネタをご紹介しておこう。この本の巻頭の4色カラーページの、題して『ラグビー』という作例(p.4)。
題名どおりラグビーのかっこうをした少年たち、前景の1人が『とられて たまるかッ』とモノローグしながら、丸っこいものを抱えて走っている。やや引きの画面になると、彼が抱えているものは、異様に大きな彼のタマキンであると分かる。

 『とられて…… とられて たまるかあ~~~ッ』

と内心で叫びながら、彼はドドドド…と走り続ける。けれどもさいごのコマを見ると、他の選手らが、そのタマキン君を追いかけて走っているのかどうか…というところが、実はいまいちよく分からないのだった。
これを見て。本人にとってはひじょうに大切なものであっても、他者らがそれを欲しがっているとは限らない…と、そういうことはある気がするのだった。

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