2010/09/21

西田理英「部活動」 - 路傍に立ちつくす≪外傷≫

西田理英「部活動」第2巻 
関連記事:『西田理英「部活動」 - もはや『触れること』は…』

西田理英「部活動」について関連記事で、『全2巻のうちの第2巻が行方不明』なんてことを申し上げたけど、それがさっき自室のあらぬところで見つかった。それをここに歓びをもってご報告、ばんざぁ~い!

で、再会の歓喜とともに、ひさびさそれに目を通してみて…。『これは謝罪記事もんだな』と反省させられたのは、自分の記憶ほどにはラブコメ要素が多くなかった、ということ。何せ少女まんがのラブコメを、自分がひところすごい勢いで読んでたので、それらと印象が混ざり込んでいた感じ。
というわけで、これは実質、謝罪記事なのだった。ここは謝罪会見でブレイクした有名人の、『反省してまぁ~す』という名言を借りておいて(!)。
そして、反省文だけってのも何なので、この機会に第2巻から1つお話を見ておくと…(p.45, 『運転教習』の巻)。

新米教師の南部顧問は、車の免許を取ろうとしている最中。そこで教本を見て自主的に勉強していると、彼の安下宿の玄関、窓、さらに床下から、おなじみの部員ども3匹がヌッソリと登場してきやがる。
もはや南部センセはびっくりもしないが、でもいちおう『今日は学校休みで ここは俺の部屋 なんだけど…』とまでは申し立ててみる。すると部長の赤井は、やたらでかい文字で『一切問題ない』と断言するのだった。

で、免許を持ってない高校生の部員らが、南部センセの免許取得の心配をしてくれるのだ。そして先生が『標識がむずかしい』みたいなことをうかつに言ったので、すかさず赤井が冷静に大ハッスル。

標識:歩行者専用道路 【赤井】 では突然ですが この標識は何でしょう
 【南部】 (略)「歩行者専用道路」 だっけ?
 【赤井】 いかにも 表向きは そう呼ばれている
 だが正解は 「夏子と三郎」です
 【南部】 人名!?

ここでちょっと思うんだが、すでに仮免までは受かっているという南部センセが、そんなざらにある標識を見て『…だっけ?』とは、少々やばい感じでは? そして赤井の、『いかにも 表向きは そう呼ばれている』、というセリフがいすぎ!
で、いさいかまわず赤井のおしゃべりは続くのだった。『その日 三郎は いつものように 娘の夏子と 散歩をしていた――』と、ここから回想っぽい表現になって、仲むつまじそうな父と娘のハートフルな物語がスタート。

 【夏子】 夏子ねえ 今度学校で 運動会があるのよ
 【三郎】 そうかそうか じゃあお父さん 応援に行かないとなあ
 【夏子】 え― いいよ別に
 だってお父さんの事 友達に見られたら 恥ずかしいじゃん

そこで背景が暗転し、手をつないだ父娘は、標識の図柄のかたちで凍りつくのだった。

 【赤井】 そんなこんなで できたのが この標識とか
 【南部】(モノローグで、)そんなこんな!?

南部顧問は『なぜそうなるのか、わけわからん』のように苦情を言うが、しかしいっしょに聞いていたヒラ部員2名は、『この事をバネに 頑張ったと思うぞ 三郎は』、『さすがだね 三郎』と、みょうに感心している。たまらずに南部センセは叫ぶのだった、『そもそも 三郎って誰だ!!』。

それからエピソードはドタバタへと展開するのだが、このさいそこは略。で、追ってその日、路上教習に出た南部センセ。やたら緊張しているので、教官が彼をリラックスさせようとしてか、ひじょうにやさしい質問をしてくる。

 【教官】 あの標識は何か わかりますか?
 【南部】 えっ標識!? ひょ…あっ 夏子と三郎

かくて『夏子と三郎』の≪外傷的≫(トラウマちっく)な物語は、標識のかたちになって、全国あっちこっちの路傍に現前し続けるのだ。てゆうか、南部顧問のような人には免許とか交付しないように、ぜひとも行政ががんばってほしいところではある! と、この堕文に交通安全の願いをこめて…っ!

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