2010/03/01
久喜青葉「アホアホ学園」 - すべては埼玉に還る、新芝川を超えて
参考リンク:Chakuwiki「久喜市」
Mid 1990'sの少年サンデー掲載のショートギャグ。埼玉の久喜市青葉に在住だったという作家が、『究極のアホ野郎』とも絶賛されるアホ界の超エリート≪“浦和”ヒロシ≫君の、ワールドワイドな活躍を描く。
これは、ニホンにおける、というか、『宇宙におけるアホの中心地は埼玉である』と宣言しているような作品か、という気もする。この時代から現在までのギャグまんがに、≪埼玉≫というキーワードが…。いつも何となく見え隠れしているような気もするのだけれど、あまり言い張る気もない。
そういえば筆者はこの本(少年サンデーコミックス, 全3巻)の、第1巻と第3巻を手に入れた後、第2巻を見つけることがなかなかできなかった。第1巻では『アホアホ学園』の生徒だったヒロシ君が、第3巻ではその教師として登場する(!)ので、その間の展開が大ぅい~に気になってたのに!
で、探したあげくにやっとそれがめっかったのは、川口の古書店にてだった。『やっぱり』…というわけで、埼玉から出たものはおのずと埼玉に還っていくらしかった。
しかもその、第2巻の内容ってのを見たら。ヒロシ君がたまにはうちに帰ろうかと思って学園を出たら、自分の実家の場所を思い出せず(!)、そして10年間もほっつき歩いている間に大人になってしまい、そして(卒業もしてないのに)アホアホ学園の教師として迎えられる、とは!
これがもち、≪ギャグ≫ではあるんだけど。かつ、われわれにおなじみの≪オイディプス神話≫のバリエーションにも他ならぬ、まったく≪外傷的≫なエピソードではある。テーバイから出たものはテーバイに還っていく。
そしてわれらのヒロシ君は、実家の場所も知らないくらいなので、両親のこともまた、よくは知らない。何せ、オイディプス君だけに。その彼が両親(らしき2人)にめぐりあうまでのお話がまた≪外傷的≫なので、ちょっとご紹介しとくと。
さいしょからやたらに『チンチンが小さい』という特徴をもつヒロシ君ではあったが、その活躍が過ぎたせいでとうとう、チンチンを完全にスリ減らし、女になってしまう(!)。するとかわいいのでアイドルとしてデビューし(デビュー曲『セクハラはやめて』)、大人気を博するが、しかし芸能生活のストレスがおっぱいにたまって、それがしまいには大爆発してしまう。
というところで、『アホアホ学園の海外分校でチンチンがゲットできるらしい』…という情報を頼りに、ヒロシ君らは≪自由の女神≫型の飛行機でエジプトらしき地に向かう(第3巻, p.93)。この自由の女神が、なぜか余興として空中でストリップを演じる…というのもまた意味ありげだし。
で、海外分校に到着し、そこで栽培しているチンチンの形をした『チンゲン菜』とゆうチン味を食すると…(中略)。そして男に戻ったらしきヒロシ君らの前に敵として、巨大な姿の海外分校の理事長が立ちはだかる。が、敵の背中にファスナーを見つけたヒロシ君がその着ぐるみを剥いでいくと、何重もの着ぐるみの下から最後に現れたのは1本のコケシだった。
『理事長がチンチン… いや、コケシだったとは…!』
そしてそのコケシが、ヒロシ君にむかって『実は私はお前の… お前の父なんだ!!』と、打ち明けるのだった(第3巻, p.113-114)。そして父がこんなんだから、追って出てくる母も、あんまりまともではないということはご想像通りにて。…ただしこのエピソードでヒロシ君が、真の両親にめぐり会えたのかどうかは、誰にも分かったことではない。
もっと笑えるところをご紹介したかった気がするが、ともかくもかくのように、アホらしさのきわまり的な夢想譚が、どういうワケだか≪オイディプス神話≫のかたちを再現し、≪去勢≫のモチーフをしつこく再現し、そして主体にとっての決定的な≪シニフィアン≫である≪ファルス≫とのご対面…というクライマックスに導かれていく。
で、気がつかされることは、女の子が≪ファルス≫の所在をたずね歩く冒険談に比べると、男子によるそれは、びみょうにも軽みに乏しいということだ。
【付記】 上記の堕文は、例によって2009年の夏に書いていたものの再利用だが、われながらひじょうにキレがない。いつもだったら、もう少しましなことを書いていそう、という錯覚がある。たった3冊の本なのだから読み直して、もっとましなものとして再論したいが。
しかしこんどは自分の部屋の中で、今作「アホアホ学園」の単行本を見失っている(!)。いつのまにかそれは、またも埼玉へと還ってしまったのだろうか? なんて冗談はともかくも、それが見つかったら必ずどうにかしたい!
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