2010/10/12

にざかな「4ジゲン」 - 非ヤング学園・トラウマちっく学級日誌

にざかな「4ジゲン」第2巻 
参考リンク:Wikipedia「4ジゲン」

この「4ジゲン」という作品は2005年からLaLa掲載中の、不条理系ショートギャグ作品。何だかおかしい定時制高校に集う、老若男女と宇宙人と教師たちを描く群像劇。ヒット作「B.B.Joker」(1997)で知られるコンビ作家の、現在のシリーズ。単行本は2006年に第1巻、そして今2010年に第2巻が既発(花とゆめコミックススペシャル)。

…いくらショート作品でも単行本の間がありすぎで、こいつはくせえッー! その間に何かあったニオイは、プンプンするぜッーッ!! …てわけだが、まあいい。
かつ、例によって筆者が『情報』にうとくて、第1巻からずっと待っていたのに、4月に第2巻が出てたのを知ったのが昨日(10月11日)。…なわけだが、そのてのことは何度も書きすぎた。

で、帯の文句によれば『43か月ぶり』という第2巻を見てみると。自分の思ってた以上に、そのネタがダジャレばかり!
一般的には現代のギャグまんがとして、ダジャレの使用はあまりよくないとされている。特に、少女まんが部門でそう。そうなのに「BBJ」以来ダジャレ路線を押し通しているこの作家さまを、ギャグまんが界のダジャレ帝王と呼ぶのは過大評価ではなさそうだ。

――― にざかな「4ジゲン」より、『はつじょう』(第2巻, p.70) ―――
【教師】 (黒板の文字を示して、)大きな声で 答えてみましょう!! せーの!!
【生徒たち】 (口々に、)はつじょう!! はつじょう!! はつじょう!!
【教師】 はい イイ声でしたー!!
(…と言って教師は、黒板の『発条』という字に、『ぜんまい』とかなをふる)

しかし筆者の認識によると、その字はふつうは『ばね』と読む。別にそれでも成り立つので、何もかまわないんだが。
ところで、にざかな先生特有のダジャレギャグは、このように漢字や画像をからめて構成されているものが多し。『ふとんがふっとんだ』式の、単に音韻が重なっているものは少ない。
その多くが、ビジュアルなしでは通じにくい、もしくは成り立たないダジャレ…という珍しいものになっている。それが特徴的だし、個性的だ。

――― にざかな「4ジゲン」より、『自己主張』(第2巻, p.78) ―――
【娘】 (ママにおねだり、TVゲームを、)買いたい!買いたい!!買いたい!!!
【母親である生徒】 ダーメ!!
【教師】 まあまあ… 子供らしくて 微笑ましいじゃないですか… 大人になったら
(イメージ・妊娠している娘、)懐胎! 懐胎!! 懐胎!!!
(イメージ・左翼活動中の娘、)解体! 解体!! 解体!!!
とか言い出すのですよ
【母親】 言わないと思います

そういえば、別によくは知らないんだが、≪ジョイマン≫というお笑いコンビがいるっぽい。そのコントをYouTubeで見ると、『いつも振られっぱなしでモテなくて!』などと嘆く一方を、もう一方がこう言ってはげます。

『七ころび八起きィ、生ワサビ歯グキ~!』

こんなギャグでも、会場の女の子たちはキャッキャ言って悦んでいるようなので、それではダジャレも捨てたもんでないな…という気がしてしまう(!?)。

で、並べてみると、なるほど。音韻の重なりのダジャレがまったく面白くないのではないが、しかしそれをただまんがのふき出しの中に書いたのでは、インパクトがない。そこでにざかな先生のダジャレギャグは、まんがというメディアの特性を大いに活かしたものになっているんだな…ということはわかってきた。

――― にざかな「4ジゲン」より、『くじ』(第2巻, p.82) ―――
【教師】 (掃除の時間、ゴミ出し係を決めるため、)アミダクジでも 作ってやれ
【生徒A】 はい
(用紙を裏返すと線の先には、平等院・浄土寺・法隆寺、等々の阿弥陀如来像の絵が!)
【生徒たち】 (思わず息を呑んで、)…どの阿弥陀が ハズレだ…?

しかもにざかな先生のおダジャレらは、いちいち『性・死・汚物』等々にかかわる≪外傷≫的(トラウマチック)なイメージを返している。さっきの作例と似ているが、こんなのも。

――― にざかな「4ジゲン」より、『オータムof委員長』(第2巻, p.98) ―――
【委員長】 (秋の訪れを待ちかねてため息をついたら、息が白くなったので大歓び!)
初蒸気!!
【通りすがりの生徒】 は…発情期!?

書き出すことにノッてきてしまったので、もういくつか。

――― にざかな「4ジゲン」より、『聴かされる男』(第2巻, p.66) ―――
【ヤクザっぽい生徒】 (ウォークマンを大音量で聞いている同級生らを一喝、)
シャカシャカシャカシャカ うるせ―――!!
【高齢の生徒たち】 (般若波羅密多・色即是空、みたいなお経を聞きながら、)
…なかなか いいですね この釈迦… いやいや この釈迦の方が…
【ヤクザ君】 釈迦釈迦釈迦釈迦 うるせ―――!!

――― にざかな「4ジゲン」より、『背後スケッチ』(第2巻, p.67) ―――
【オヤジの生徒】 (娘が勉強をさぼりがちなのは、自分に似たかと思って、)
因果応報かも しれんな…
【スケッチ少年】 シャッ シャッ
(『淫画』というエロ本を眺めながら『オーゥ!ホーゥ!』、とはげむオヤジを描く)
【オヤジ】 (衝撃に、だっと走りだしながら、)
さ…最近は 見てないし…!! そ…そんな 外人みたいな 声出さないし…!!

と、ここまでに見た作例らはわかりやすい方で、多少もってまわったものもある。

――― にざかな「4ジゲン」より、『伝令of委員長』(第2巻, p.92) ―――
【教師】 (職員室で、)次の時間 ちょっとだけ 先生遅れるから
臨時の 休憩ってことで… 皆に伝えて
【委員長】 は…はい
(追って教室で委員長は、なるべく手短に伝えようと考えて、)
これからしばらく 小臨時休憩で お願いします!!
【生徒たち】 少林寺休憩 少林寺休憩 少林寺休憩 少林寺休憩 少林寺休憩
(イメージ・それぞれにきわめてムリな姿勢で休憩している拳法家たち!)

続・少林寺三十六房 (DVD)ここでの『拳法家』とは≪ファルスのシニフィアン≫(勃起したペニスを象徴する記号)に他ならぬのではありつつ、もはやそれも言い張らない(言いあきたから)。

で、堕文にしても結論は必要だと思うので、さいごにまとめ気味なことを申し上げると。

今作「4ジゲン」は、筆者から見ると、老若男女がまんべんなく集っている『学園もの』、というところがまず面白い。ヤングっぽい話題に終始していない…というか、学園という舞台で人々が、非ヤングな話題をぶつけあっているのが面白い。
そのように、宇宙人をも含めた多様な人々が交錯し、そして多元的な感じ方と見方が必ず交錯する…というその特徴は、こんにちにおいてポジティブなのでは? そうすると第3巻あたりの展開として、いわゆる『外人』の生徒が登場して『オーゥ!ホーゥ!』、ということもじゅうぶんにありそうだ。ま、そんな声は出さないかも知れないけど!

だいたい筆者は『前から思ってんだが』、いじめやら何やらの学校問題について、同年代のガキらを横一列に集めたシステムが、まず問題だと思う。『同質集団』というものはいちおう扱いやすいように見えながら、何かあったらプラスのフィードバックが効きまくり…ようするに、暴走し出したら止まらない。
『オレらのクラスの一体感! オー!』みたいのもいいけれど、しかしその同じ一体感のようなものが、はみ出た1人の生徒を追いつめて殺すかもしれないのだ。『かもしれない』じゃなく、まったくあることとして。

その一方、多様な分子らによる集団には、そんな『一体感! オー!』もないけれど、アウトサイダーを殺しにかかるような危険性もない。マイナスのフィードバックが何かと常にかかっているので、盛り上がりもなければ暴走もない。
で、そんなふんいきのフラットさではつまらん…とお思いの方々もおられようけれど。しかしこれからの先進諸国の社会は、いちようにそんな方向に向かっているようでもあり。かつまた、根っからのアウトサイダーである『俺得』として、まだしもその方がいいな、と思うのだった。

と、そういうわけなので。みょうに多様な人々を集めた夕方からの学園を描く今作は、ノスタルジックなふんいきでもありながら、しかもアップトゥデートな作品と言いうるのでは?
また、定時制高校だからとうぜんのこととして、ふつうの優等生やエリートっぽい人は、そこにはいない。このいわゆる『格差社会』の、少なくとも下半分にいそうな人々ばかりが登場している。筆者なんかは、ついついそこにも共感してしまうけれど…。

で、その場へとやたらと現前しているのは、われわれの申す≪外傷≫的な記号らの数々なのだ。なぜそうなのかって、なぜかもへったくれもないのだが。
…しかし『学び』というモチーフから、むりやりに≪記号≫らのありようをひねくっていくと、ダジャレ的な展開を介してその≪外傷≫らが浮かんでくる、という現象があり続けている。そして『外傷的な記号の現前』などという言い方さえをも通りこし、『記号作用の根底に≪外傷≫がある』という認識で、われわれの見方と今作の内容とが一致しているのだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿