2010/10/06
川口憲吾「脳みそプルン!」 - How to 山田 と What's 山田
参考リンク:Wikipedia「脳みそプルン!」
公式略称「脳プル」こと「脳みそプルン!」は、週刊少年マガジンに1995-2002年掲載の、4コマ基調のギャグまんが。単行本は、KC少年マガジン・全8巻。その掲載期間の長さからすると、当時はけっこう読者支持があったような感じ。
ところでわれらが大名作、三ツ森あきら「LET'Sぬぷぬぷっ」の掲載時期が「脳プル」にほぼ同じで、当時はマガジンのおギャグ部門の2TOPだったもよう。それで両者のコラボ企画の作品が、「LET'S」単行本のどこかに載っている。そして自分が今作の存在を知ったのは、そこからなのだった。
ただし今作が、かの「大文字のLET'S」に匹敵するほどのものかというと…? まあそれはともかく、こんどその「脳プル」の第3巻&第5巻を古書店で計100円で買ったので(!)、そこでごあいさつがわりに、ちょっと小さいところを見ておきたい。
(なお、この本はもくじもノンブルもないので、引用個所のページナンバーは省略)
で、第3巻の序盤、『憲吾が斬る!!』と題された、読者の疑問に作者が答えるシリーズの1編。『どうして私には彼氏が できないのですか?』という問いに、なぜか海水浴中の憲吾先生が、あざやかに回答してみせる。
【憲吾先生】 それでは「彼氏できない度 チェック」をしてみましょうか
(中略)
チェック1 待ち合わせの時 一輪車で登場していませんか?
チェック2 鼻の下に骨とか 付けてませんか?
またヘビもクビにまいて ませんか?(…ようするに、『人喰い人種』っぽい)
チェック3 女の子なのに 軍人のような言葉づかいでは ないですか?
(彼氏に敬礼して、『自分は映画館へ 行きたいので あります!!』と言っている少女の絵)
この3つのうち1つでも あったら要注意です 気を付けて下さい
というわけで、そんな大したギャグでもないのだが。ところで、いま皆さまも思われたかもしれないことを述べると…。
『軍人口調の少女』なんて現実にはいないけど(います?)、それを好むような男子らは現実にいる。かなりおられる感じ、と言えそうな気もする。
そしてそのような『萌え(フェティシズム)』の趣向は、そんなには新しいものでもなくて、ヤマトやガンダムの時代からずっとあるようなものだ。けれども近年、みょうに野放しで目立ってきている気もしつつ。
それから。追ってこの作品に、≪ペチカちゃん≫というふしぎな女の子が登場する。17歳の高校生、制服の時はルーズソックス…というと何だか『萌え』っぽいのだが。しかしその顔面が、例のスマイリー(顔文字)の『:D』にそっくりで、超かんたんすぎ!
そしてそのしゃべり方が、『山田――っ!! ちょっと来――い!! 山田集合――っ!!』と男っぽいし、しかも常時ハイテンション! で、この子が、いま呼ばれた同級生でボーズ頭の≪山田≫の前に、過剰に出没するのだ。
(あと余談になるけど、『山田集合――っ!!』というギャグがオレ的にヒット!)
あるお話でペチカちゃんは、山田を『小銭追い』というスポーツ大会の観戦に誘う。誘うというか、山田に断る権利とかあるわけないし。で、それがどういう競技かというと。
【ペチカ】 落としてころがった小銭を 追うのだ――っ!! 手に汗にぎるぞ――っ!!
追って大会当日、どこかで待ち合わせた2人。例によってペチカちゃんはテンションMAXで、『オーッス!! 山田 「小銭追い」見に行くぞーっ!! しまっていこーぜ!!』、と超ノリノリ。そして歩きながら縄跳びしたり、マンホールのフタを開けて『もしも――し!!』と中の人(?)に呼びかけたり、ぜんぜん挙動に落ち着きがない。
そしてしまいに、ふいにペチカちゃんは山田のバックを取って、彼のボーズ頭に手で作った鉄砲をグイと突きつける。
【ペチカ】 山田――っ!! 後ろにまわられたな!! 戦場だったら 殺られてるぞ――!!
【山田】 普通に歩けないのか!! おまえ!!
ここにさっき見た『軍人口調の少女』というものが、ふいにわれわれの前に現れる。そうしてこれらをわれらのペチカちゃんは、そのおなじみの、笑いが貼りついた顔をキープしたままで遂行し続ける。
で、これらを見ているうちに、うかつだが筆者もまた、『何この子、かわいいかも…』と感じるにいたったのだった。
ところでなんだが、別にブサイクでもないけどボーズ頭しか特徴がなくて、わりとさえない山田少年。彼はペチカちゃんだけでなく、同級生の男からも、ふかしぎで熱烈な関心をいだかれているのだった。その少年は、『How to 山田』というビデオを作ったぜ!と言って、本人の前でそれを再生する。
【ナレーション】 もし町で山田に遭遇した場合 鈴を鳴らしましょう
山田は襲ってきません
【山田】 俺は 熊か!!
【ナレーション】 山田の好物はプリンの 茶色の部分と 2日目の カレーです
これをあげると 山田は喜びます
以下、いろいろと続く。そしてどんどんでたらめがひどくなっていくので、『ウソだ! みんなウソだーっ!!』と叫んで、山田はその場から逃走する。
これはどういうことかって、山田があまりにもどうでもいいやつなので『逆に』、人々は彼について、いろいろと想像をこらすのだ。何でもないので、“すべて”でありえよう、と人々は考えるのだ。そして≪少年≫というものは基本的にその『何でもないもの』なので、そこで山田が読者層の代表として、作中の人々の想像のネタになっているのだ。
そして、『想像のネタにされることの外傷性』というものを少年の側から描いた今作「脳みそプルン!」。それは、追って21世紀のマガジンに出た氏家ト全「女子大生家庭教師 濱中アイ」(2003)の方向性を予告しているな、とは言えなくもなさそう。
そんなとこまでを今回は見て、「脳みそプルン!」の話はぜひいつかまた!
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