参考リンク:Wikipedia「みかにハラスメント」
このところ、わりにかたい話が続いていたように思うので、ちょっとやわらか方面へ出張。そこで有名なSF(?)お色気コメディ、水兵きき「みかにハラスメント」を取り上げたい。ガンガンパワード2004年掲載の読みきり3部作、単行本はガンガン・コミックス全1巻。
――― 水兵きき「みかにハラスメント」, 版元からの広告文 ―――
『みないで…ください…。B(バスト)85のごくフツーの女の子・みかは、お姉ちゃんの発明で、脱がされ、お仕置きされのタイヘンな目に…』
さてこの作品を、筆者が一読しての印象は、『わりとむかしのなかよしやちゃおに、こんなお話が載ってなかったかな?』…というもの。発想やお話の運び方に、いちおういい意味の幼児性があるので、『児童向け少女まんが』っぽい。童顔でグラマーというヒロインの造形も、そっちの系統だし。
…といった前提があってこそ『逆に』この作品が、たいそういやらしいものになっているのかと! どのようないやらしさかって、いまさら筆者が説明する必要を感じないが!
んー、何やら語り方のむずかしさを感じる。この作品の、エロいところを『エロい、エロい!』と指摘しても、超いまさらなわけだし。ではもう、いちばん印象に残ったところを述べて、ささっと終わりにしよう。
シリーズファイナルの第3話、『子供のせかい』(p.77)。そこでヒロインは、早熟すぎる天才幼女≪ココア≫の謀略にかかって幼稚園に編入された上、『幼児化リング』というものを首にはめられてしまう。そしてそれによる能力の低下、どんどん進行する幼児化、というはずかしめをこうむる。
まず彼女は、自分の名前が漢字で書けなくなる。次には、ごく浅いプールが怖くて、水に入れない。ランチタイムには食物をこぼし、食事のトレイをひっくり返す。
そこでココアはほくそ笑みながら、みかを乳母車に乗せて、スプーンで『あーんして』と、いわゆる『食事介助』に出る。それを屈辱に感じたみかが『や やだ』と断れば、病気扱いして注射器を出してくる。
そのお注射が怖くて怖くて、『そんな 大きいの だめ~』(“笑”)と言って降参し、みかはおとなしく介助をこうむる。さらにココアは哺乳ビンを出してきて、これを呑まないと注射だと、またおどす。しょうがなくて哺乳ビンを吸っているみかを、周りの園児らが、『かわいい♥』、『赤ちゃんみたい』、と言ってそれを見守る。
と、こんなことらの間にみかは、精神がどんどんまいってきて、赤ん坊扱いをおかしいとか屈辱とか、感じなくなってきているのだ。真の問題は、そこだ。
それからおねむになったみかが、目ざめるとおねしょをしてしまっている。さきのミルクに、ココアが一服盛ったせいらしい。そこでココアはみかのパンツを脱がして、紙おむつをあてる。おむつでなければはだかのまま、とおどしつけた上で。
ここいらが最終状態で、もはやおむつとよだれかけしか身につけていないヒロインは、『おむつ… ちゅ… つけてくれて… ありがとう』と、感謝の言葉をココアから強いられる。さらには幼稚園の教壇に上げられて、園児らに向かって、『おもらしして… ごめん… なさい』と謝罪させられるのだった。
で、場面が変わり。みかの幼なじみのヒーロー≪龍彦くん≫が、半日ぶりにみかに再会すると。幼児化最終状態のヒロインはベッドの上で、何とココアのまったく平らな胸を、『ちゅ~』と吸っている(!)。びっくりしきってヒーローが、『み みか 一体 なにを…』とたずねれば、彼女はこのように答えるのだった。
『み みかね おっぱい ほしかったの…』
ここまで説明しなかったがココアは、龍彦くんに横恋慕して、彼とみかとを引き離すために、これらのことをしてきたのだ。だが、そんなでも龍彦くんが引かないので、さいごのひと押しとしてココアは、彼の見ている目の前で、みかのおむつを取り替えようとする(!)。
これがたいへんな、ストーリー上の大やま場だが。だがしかし、その後の急展開は、実作を読んでのお楽しみとして…!
さて、ここにいたるまでの描写が、誰にとってもショッキングだったとは思うのだが。ところで筆者は職業が介護方面なので、描かれたみかの幼児化が、高齢者における生活能力レベルの低下とまったく同じ、ということに大ショックをこうむったのだ。
そして、自作自演の親切よがしで、みかのケアにはげむココアの姿。これがまた、実在する『けしからぬタイプの介護』というものとそっくりに描かれていて、それもひじょうにショッキングなのだ。
つまり、過剰なケアが日常生活能力のさらなる低下を招く、ということがあるわけだが。だがしかし、美少女が超うす着でいろいろ活躍してうれし恥ずかし…みたいなおまんがを眺めて、何もそんなことを考えたくはないのだった!
にしても。バカらしいにもほどがあるようなお色気まんがでありつつ、こうして何か『ほんとうのこと』を、描きぬいてしまった感じの「みかにハラスメント」という作品。それに対する、大いなるリスペクトは自らに禁じえない。これは断言いたす。
けれども筆者が、その後の水兵きき先生の諸作を拝見するに、この水準に匹敵するものが、ちょっとないような…? 別にこういうことは申し上げたくないが、追って出た「葵さまがイかせてアゲル」(2008, ライバルKC, 全2巻)を拝読して、『こんなンじゃイケねえ!』と、思わず叫んだこともあったりしつつ。
いやさすがに、声に出してそんなことは言ってないが…! ともかくも水兵きき先生によって、再びものすごいご創作のあることを、期待してやまざる筆者なのだった。
【補足】 今作「みかにハラスメント」3部作のサブタイトルは、『えっちじゃないせかい』・『犬のせかい』・『子供のせかい』。並べてみると、これが一種のスウィフト「ガリバー旅行記」の現代版、という感じもあるな…とは思うが、別に言い張らない。
0 件のコメント:
コメントを投稿