2010/02/17

土塚理弘「清村くんと杉小路くんと」 - ユートピアの夏、BLの夏…!?

 
参考リンク:Wikipedia「清村くんと杉小路くんと」

これ、すなわち「清杉」という略称でおなじみ、ショート形式のギャグ作品(2000, ガンガン・コミックス, 刊行中)。それについて何かを書こうとしていたら、自分はこの手のドタバタ系のギャグまんがが苦手、ということを気づいてしまった。
それらを読むことはまったく苦手でないが、『こういう作品です』、と申すことが苦手だ。それプラス今作は、失敬だが『キレの悪いトイレみたいに』、断続でシリーズがちょぼちょぼ続いている…そこがまた話題にしにくいところ。
でもまあ、ほんのご紹介までに何か書いておけば。

見た目は不良っぽいがお人よしで超甘党のヒーロー≪清村くん≫、高校3年生。中学時代はサッカーで活躍していたが、監督と衝突してヤメちゃったという過去あり。
その彼を≪とりごや高校≫のサッカー部に勧誘したのが部長の≪杉小路くん≫、黒髪の優等生っぽい少年。で、さっそく翌日の試合に出てくれと言うのだった(第1巻, p.36)。なぜってつまり、『おまえ来ないと 5人しか いないんだよ!!』。

5人が6人になっても、いっこうにしょーがねーし…。フットサル部にでも変わった方がいいのでは…? けれど作中人物らは、そんなことを深くは気にしていない。

がしかしニヒルを気取っている清村くんが『嫌だ』と言うと、その翌日、ふつうに校庭のグラウンドで試合が始まってしまう(…5人対11人で!?)。で、何と終盤まで、とりごや高は0-0のイーブンで闘っている。
という杉小路くんらのありえざる健闘を、校舎の高いところから見た清村くん。そこでやっぱり加勢しようと思い直し、『くそっ』と叫んで階段を、猛ダッシュで駆け下りる。しかし不運にも脚がからんで、彼はガゴンガゴンと階段を転げ落ち、さらには窓をブチ破って校舎から飛び出してしまう(!)。

すると試合中の杉小路くんは、グラウンド目がけて落下する血まみれの清村くんを見つけ、大喜びで『パスだぁ』と叫んでするどいボールを送る。そのボールは落下中の清村くんに命中し、ハネ返ってそのまま敵ゴールに飛び込む。
そこでレフェリーの長い笛が鳴り、『試合終了!!』と声が響く。勝利の歓喜にとりごや高の『イレブン』(?)がわき、そして杉小路くんが『やってくれたぜ 清村…』とか言ってるところで。決勝点をキメた新たなるエースストライカーは、うつろな目をして血みどろでグラウンドに横たわったまま、かぼそい声にて『いしゃ… きゅうきゅうしゃ…』と呟いている(第1巻, p.44)←ハッピーエンド。

筆者は今シリーズの最初の6冊しか読んでいないが、以後もだいたいこんなようなお話が続いている。…というのはうそで、以後はもっともっとダメっぽいお話になっている。ただ単に彼らが昼食のパンを奪い合う、とかそんな。
なぜってそれは、清村くんがサッカーへの情熱をとり戻したのと入れ換わりに、杉小路くんはじめ先住のサッカー部員らは、『いかにしてサッカーをやらないか』ということをガンバリ始めるからだ(!)。ようするに、清村くんをツッコミ役として…。というよりも彼を『総受け』担当として、他のあらゆる人物らが彼をイジりまくるお話になっている。

で、清村くんに対する各方面からの『攻め』の多彩さが、今作の見どころなのかも知れないが。しかしそういうところはBL用語に詳しいお方だと、うまく記述できるのではないかと思う。筆者にはむずかしい。
別に冗談は申してなくて、男子高校生らがじゃれあってるところを描くだけの今作には、≪BL≫っぽい要素が明らかにある。そのメインの『秀才攻め×ヤンキー受け』というカップリングが、一種のツボをついているような気もしつつ。

なお、しまいにはどうなるかというと。最初のシリーズの最終話で明らかになるのだが、何と彼らは部員が5人のサッカー部で、例の『全国』を制したことになっている(!)。ところがそれへの続編は、お話の時間が戻って、彼らの『高校3年生の夏』という季節をえんえんと語り続ける。
そうして≪ユートピアの夏≫という季節に閉じ込められた少年たちの、こっけいで喰い意地きたなくも血まみれの青春は、いつまでもいつまでも続くのだった…!(←ハッピーエンド)

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