2010/02/16

G=ヒコロウ「不死身探偵オルロック」 - And回路 と Or回路

 
参考リンク:Wikipedia「不死身探偵オルロック」

一部でびみょうに評価が高いようにも思うのだが、しかし筆者の見うけるところ。この作者G=ヒコロウ様には『作品』というような作品が、あん~まりなさげ。
近年、アスキー系列とかソフトバンクとか、そんなような新興ぎみの版元らから、一群のジャーナリスティックなまんがが出ていて。またそれらがちょいと、ギャグまんがっぽい性格がある、もしくは笑えるものかのように見られている、らしいが…。
(中略。要するに、筆者はエッセイまんがみたいなものは好きじゃない)
で、今作は、こちらの作者の作品として、もっとも『作品』らしいものの1編かと見うける。と申しても、読んでその≪意味≫が分かるか…というと、きれいサッパリ分かりま千円。

千円と言ってから思ったが、この本(ブロスコミックス, 全1巻)がA5版140P足らずでカラー口絵もなしで、定価670円+税は高くないだろうか? …まあいいや、自分はブックオフで105円で買ったので。
それはともかく、まずその105円の本の概要を。書名には「オルロック」だけが出ているが、中は「プロフェッサーシャーボ」という作品と2本立てであり、ページ数は後者の方が多い。かつ、後者だけ前半が4コマになっており、正直言ってそこがいちばん読みやすい。

で、それらの≪内容≫みたいなことを、どうだと言えばいいのやら…。ちょっと啓発的なダイアローグを作中にめっけたので、それをご紹介すれば。
死んでも死なない『アンデッド』の名探偵≪オルロック≫が歩いていると、中国っぽいカッコの若い男女が目の前に現れ、『中国だーから 犬おいしー♪』などと歌い、犬をかじっている。びっくりしてオルロックが『ここいらじゃ 見ない奴だな』と言うと、中国女がへんにチカラを込めて『その まさかさ!!』と言う。
それでまたびっくりし当惑し、われらの主人公は『え!? いや わからねえ!』と応ずる。そうすると中国男は、

 『わかって 欲しくも ありません!!』

と核心的なセリフを、あっさりと吐いてくれるのだった(p.42)。

…なんてあまりにもわけ分からぬ作品らなのでむしろ、『だがそこを何とか、分かってたもれ!』という作品の向こう側からの声が、聞こえてるような気がしてきた(幻聴)。なので、もうちょっとがんばってみれば…。
「オルロック」にしろ「シャーボ」にしろ、その登場人物らは『なぜに自分は生まれてしまったのか?』ということにとまどいながら、どうしていいか分からず、へんにもがいてじたばたしているように見える。という彼らの世界…まともな日常というのがまったくない世界の中で、確実に≪リアル≫なのは、破壊とか死とか破滅とか、そんなことらだけだ。
ゆえにオルロックは過剰にポックリと死んでみせ、シャーボはつまらぬきっかけでその超科学力を用いて地球を破壊しようとする。で、そのようなことらが何とか≪ギャグ≫っぽく描かれているのだ。

結論の出しようもないので、筆者が『いい』と思ったエピソードをご紹介して終わりにしよう。海辺にて発生した連続殺人の現場、名探偵オルロックの手腕に期待して…というか冷やかし半分で、女性の刑事と助手の女の子が、彼をチヤホヤする。
そこで一瞬のぼせかけた名探偵は、しかしいっきなりタメもなしで、

 『奥義!! 性・欲 OFF!!!』

と叫んで、そして手刀一閃! 彼を惑わすうっとうしいメスら2ヒキを、海の遠くにボッチャンと叩き込む。
そして、大ワザの後のシメのポーズをきめたオルロックは、こんどはすかさず『ON!!!』と叫ぶ。すると状況を見ていた警部らは、『もう!?』と言ってびっくりする(p.28)。

『≪性欲≫を制御する』などということは、仮にできてもこの程度…というお話なのだろうか? または、ぜんぜん色気のない生活を送っていそうなオルロック様に、そんな性欲がみなぎってたとは…と、ここでびっくりすべきなのだろうか?
そこらがちっとも分からないままに、この堕文は終わる。しかしこういう方向性もありかとは大いに思うので、重ねて申すがこの作者さまの『創作』っぽい作品に期待したい。

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