2010/02/27

茶畑るり「へそで茶をわかす」 - ≪詩的言語≫しか存在しない

 
参考リンク:Wikipedia「へそで茶をわかす」

1992年、中学生でデビューした茶畑るりが、唯一りぼんに残した超傑作4コマ・シリーズ(りぼんマスコットコミックス, 全3巻)。略称、「へそ茶」。
これについて2002年以来、過去に自分が書いた文章がいろいろと手元にあるのだが、見直してみて、いずれもあんまり気に入らない。そこでいっそ、その中に抜き書きされている作中のネタをご紹介して、この場ではお茶をにごそうかと。
…『茶どころ』静岡から出た作家が、お茶の美味さをテーマに描いた作品なのに(?)、そこでお茶をにごすって…!
けれども意外に、筆者がムダに堕弁をこくよりも、皆さまには楽しめるかも? 以下、お話の前提として、ちょっと変わったおもしろ少女であるヒロインが≪江崎ぐりこ≫、その親友で常人っぽい女の子が≪水田まり≫。

 ぐりこの部屋で。観葉植物を見つけたまり、『いいわね。なんていう名前?』
 ぐりこ『まだ決めてないよ。…「ため吉」なんて、どう?』
  ―――――  ―――――  ―――――
 地図の上に『○の中に×』という記号を見つけたまり、『この記号、何だっけ?』
 ぐりこ『それは…豆電球』
  ―――――  ―――――  ―――――
 ぐりこ『まり、うな重と70って似てるよね。パンタロンとパンシロンも似てるよね』
 まり『え? うーん、まぁそうね』
 その時、電話がRRRRRR...
 ぐりこ『そうだ! でんわとはにわも似てるよね』
 まり『いいから早く電話に出なよ』
  ―――――  ―――――  ―――――
 ぐりこ『まり、土曜日の時間割ってどうだっけ』
 まり『えーと、保健、芸術、数学ね』
 ぐりこ『保、芸、数か。何だか『保くんの芸の数々』って感じだよね』
 まり『保くんって誰』
  ―――――  ―――――  ―――――
 ぐりこ『まり、ラッパ呑みってあるでしょ』
 まり『ラッパを吹くみたいに、ビンから呑むことね』
 ぐりこ『そこでわたしは新しく、バイオリン呑みを考えた』
 まり『…それ、ナンだか呑みにくくない?』
  ―――――  ―――――  ―――――
 ぐりこ『ふつうラーメンといえばショーユ、ミソ、シオ。
 そこでわたしは新しく、酢ラーメンを考えた』
 …その『酢ラーメン』とやらのドンブリから、ツゥゥ~ンと鋭いニヲイが…!
  ―――――  ―――――  ―――――
 ぐりこ『まり、ラッパズボンってあるよね』
 まり『スソがラッパみたいに広がってるズボンね』
 ぐりこ『そこでわたしは新しく、中ほどに穴が開いた笛ズボンを考えた』
 まり『…穴からお肉がはみ出してるわよ』
  ―――――  ―――――  ―――――
 ぐりこ『まり、カンをけるとカ~ンとゆう音がします。じゃあビンをけった時の音は?』
 まり『えぇッ? …(アブラ汗とウス笑い)…ビィ~ン…』
 ぐりこ『何で? そんな音しないよ!?』
 まり『し、知ってるわよ! 何て言ってほしいのよ』
  ―――――  ―――――  ―――――
 先生『「だから」を使って短文を作りましょう。まず水田さん』
 まり『はい。「彼は約束を破った、だからボコボコにされてしまった」』
 先生『いい例文ですね。では江崎さん』
 ぐりこ『…「からだから何か出た」』
 まり『何かって、何よ!?』

いや~、いいなあ…と、自分ばかりが愉しんでいてはいけないが。さてご覧のごとく、≪言語≫の機能の実用性とか社会性とかいう部分、そこらに対するかわいい攻撃を描く…という性格を、今作「へそ茶」は有する。
『そうじゃなくて!』と明示的には別に言っていないが、しかしコード(規約)にしばられたつまらない既成の記号らを、ぐりこの機知は≪詩≫に変えていく。そして生活全体を、彼女はいきいきとした機知あるポエムに変えていく。

 『“言語”には、詩的言語しかない』 by ロラン・バルト

だから、一見のところ乱雑っぽい画面にはしたな気味なギャグがめんめんと描かれている今作「へそ茶」は、実は≪少女まんが≫のコアを体現している作品でもあるのだ。なぜならば、少女というまたきアウトサイダーの立場からのプロテスト、社会およびその≪コード≫へのプロテスト、という性格がなかったら、少女まんがなんてこの世になくてもいいわけだから。
しかもそのプロテストを、楽しい≪遊び≫、ことばの遊び、生活の中の遊び、として軽妙かつゆかいに描いている今作について、筆者は『傑作中の傑作』以外におくることばがない。で、そんなカタいことばしか思いつかないところが、ほんとうに大人のダメなところだなあ…などと痛感させられてもみるのだった!

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